親の仕事の都合で、急に授業料が支払えなくなった・・・。
突然そんな状況になることがあります。
平成26年に文部科学省が行った調査では、大学、短大、高校を中退した学生のうち、20.4%の学生が、経済的な理由で学校を辞めなくてはならなかったそうです。
せっかく勉強して入った学校を辞めてしまうのは、本当にもったいないことです。
そこで、「学費が払えなくなった時にどうすればよいのか?」学費の支払い対処方法について詳しく紹介したいと思います。
大学の学費が払えない!どうやって捻出する?
「学費」と一言にいっても、学費にあたるものはいろいろあり、ノートや教科書・授業料といった学校や塾などで、教育を受けるための費用全般を指します。
その学費で一番の割合をしめるのが、入学金と授業料。
しかし近年では、親の仕事の都合や離婚などで、経済的な理由で学費が払えなくなり、退学する人や進学自体をあきらめるという人もいます。
でも、どうしてもあきらめられず、なかには自分で借りてでも行きたいと思う人もいますよね。
そんな時、どんな学費の捻出方法があるのでしょう?
学生本人が学費を捻出できる方法は以下の5通り
- 奨学金を申し込む
- 地方自治体で借りる(生活福祉資金)
- カードローンや学生ローン・クレジットカードで借りる
- 親戚から借りる
- バイトして稼ぐ
それぞれの借入方法について詳しく見てみましょう。
奨学金を申し込む
親が学費を工面できない時に、子供が借りれる資金として、最も一般的なのが「奨学金」です。
奨学金は国が運営している、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が一般的に知られていますが、企業や大学が独自に奨学金制度を設けているところもあります。
しかし、誰でもが借りれるわけではなく、ある程度の学力と資質が問われ、借りれる人数にも制限があります。
また、申し込みは在学している学校または進学した学校の奨学金窓口からしかできず、申し込み期間も決まっているため、いつでも申し込めるわけではありません。
ただし、日本学生支援機構では、「緊急・応急採用」というものがあり、親の失業や死亡・災害など、やむを得ない場合に限り随時受け付けをしています。
しかし必ず給付されるわけではなく、予算の都合上、翌年度にしか採用してもらえないこともあります。
また、奨学金の振り込みは一括ではなく、月々の給付型で入学後からの給付になるので、入学金や初年度の授業料には対応できません。
地方自治体で借りる(生活福祉資金)
自分の住んでいる市区町村役場に行って手続きができる、「生活福祉資金」というもので、低所得世帯の子供が、高等学校・大学または高等専門学校への入学に必要なお金を借りれます。
離婚による母子・父子家庭や寡婦(未亡人)家庭であれば「母子父子寡婦福祉資金貸付金」というものがあり、こちらも入学に必要なお金を借りることが可能です。
市区町村によって借りれる金額や条件が違いますが、社会福祉協議会の目安として、入学に必要な費用として50万円以内。就学に必要な資金として大学生で月6万5千円以内(必要な場合は1.5倍まで可能)となっています。
ただし、申し込みの際に連帯保証人が必要で、連帯保証人がいれば無利息で借りれるのですが、いない場合は有利子になります。
カードローンや学生ローン・クレジットカードで借りる
学生でも借りれるカードローンやクレジットカードなどがあります。
カードローンの場合は、20歳を超えていてバイトで安定した収入を得ていないと申し込みができないので、申し込みは大学生になってからしかできません。
そのため、入学金の支払いには間に合いません。
クレジットカードの場合は、高校生を除く18歳から申し込めるところもありますが、親の同意が必要です。
また、ほとんどのクレジットカードのキャッシング枠は、5~10万円のことが多いので、入学金には足りません。
親戚から借りる
貸してくれる親戚がいれば、親戚から借りることも考えてみましょう。
バイトして稼ぐ
どこにも頼れないとなると、自分でバイトして稼ぐしかありません。
支払いには期限があり、入学金の場合は待ってくれるところは少ないので、期日までに支払えないと入学辞退とみなされます。
また、バイトして稼ぐ以外の方法で学費を捻出する場合は、必ず返さなくてはいけません。
無理して借りて、結局途中で辞めるくらいなら「借りてまで行かなければよかった」ってことにもなりかねません。
授業料が払えない!そんな時はお金を工面する前に大学に相談
入学金を支払ったとしても、大学に通うには授業料が必要です。
入学金は文字通り入学する時だけ必要ですが、授業料は半期に1度または1年に1度まとめて支払わなければいけません。
国公立だとおよそ54万円。私立だと平均しておよそ90万円かかり、授業料の他にも施設費がかかるので、およそ100~110万円ほどが毎年必要です。
そして、授業料の納付には期限があり、授業料を納付せずに放っておくと除籍になってしまいます。
そんな時に、銀行や金融公庫・カードローンなど、どこかから借りて払おうとする人もいると思いますが、銀行や金融公庫では学生本人の借入はできません。
また、カードローンや学生ローンで借りたとしても、借りれる金額が低いので足りません。
授業料が払えないという時は、借入を考える前にまず大学の学生課に相談してみましょう。
成績や世帯年収にもよりますが、授業料の全額または半額免除になる大学や、分納や延納してくれる大学もあります。
まずは学生課で相談をして、どんな方法があるかを確認してください。
授業料の免除が受けれなかったとしても、分納や延納が認められれば、それから方法を考えていけますよね。
日本学生支援機構の他にも奨学金を受けれる機関がある
授業料について大学に相談すると、さまざまな方法を教えてくれますが、一番多く紹介されるのが、奨学金制度です。
ほとんどの場合が、「独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)」という文部科学省所管の奨学金制度を紹介されます。
しかし奨学金制度は、地方自治体や企業・財団法人といった民間が運営するものや、大学独自に奨学金制度がある大学もあります。
主な奨学金は以下になります
- 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
- 地方自治体の奨学金
- 看護・医療・福祉系分野の奨学金
- 民間企業の奨学金
- 大学独自の奨学金
- 新聞社の奨学金
- 病気・障害・遺児などのための奨学金
それぞれの奨学金制度について詳しく見てみましょう。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)
奨学金といえば日本学生支援機構というくらいポピュラーで、奨学生の90%がここで借りています。
日本学生支援機構の奨学金は、給付型と貸与型があり、貸与型は第一種・第二種・入学時特別増額の3種類に分かれています。
給付型は文字通り、給付されるので返還の必要はありません。
貸与型の第一種は無利息で借りれるものですが、特にすぐれた学生で経済的な理由によって修学が困難だと認められた場合に貸与される奨学金。
第二種は、利息がかかる奨学金のため、第一種に比べてゆるやかな基準で選考された学生に貸与されるものです。
また、利率は年度ごとに違いますが、上限は3.0%までとなっていて、在学中は利息が発生しません。
入学時特別増額は、日本政策金融公庫の国の教育ローンに申し込んだけれど、利用できなかった世帯の学生を対象としているもので、入学月の奨学金の月額とは別に一時金として増額できるものです。
第一種・第二種のどちらの奨学金に対しても増額できますが、有利子の貸し付けになります。
ただし、入学時特別増額ですが、入学前には支給されないので、入学金や授業料には利用できません。
地方自治体の奨学金
地方自治体の奨学金は、自治体ごとに名前が違いますが、自治体によっては上記で説明した、生活福祉資金や母子父子寡婦福祉資金を奨学金としているところもあります。
市区町村独自の奨学金制度があるところもあり、貸与型だけではなく、給付型や償還免除型といった、返還する必要のない奨学金を受けれるところもあるので、自分の住んでいる市区町村に確認しましょう。
看護・医療・福祉系分野の奨学金
将来、看護師や医療関係、福祉系の仕事につきたい学生のための奨学金で、「病院奨学金」といわれているものです。
独立行政法人国立病院機構や徳洲会グループ・公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会などがあり、病院独自の奨学生を募集しています。
これらの機関では、学生に無利子で奨学金を貸与し、卒業後に奨学金を貸与された病院や施設に、貸与された期間と同じ期間勤務することで、返還が免除になるところが多いです。
そのため、途中で退職したり、資格が取得できずに勤務できなかった場合は、一括返済を求められます。
民間企業の奨学金
トヨタ自動車やコカ・コーラ・JTなどさまざまな民間企業が、実施している奨学金制度で、企業指定の大学に進学する生徒や、企業指定の高校の生徒が大学に進学するために利用できるものです。
住んでいる地域に関係なく利用できる企業と、住んでいる地域や大学の所在地を限定している企業もあり、企業ごとに対象者の条件はさまざまです。
ほとんどの企業では給付型の奨学金ですが、なかには貸与型の奨学金のところもあるので、よく確認して応募しましょう。
応募は、企業ごとに条件がありますが、条件を満たしていれば誰でも申し込めます。
しかし、採用人数はあまり多くはないので、日本学生支援機構と併用できる企業の場合は、両方の申し込みをしておくといいでしょう。
大学独自の奨学金
国公立・私立ともに、大学独自の奨学金制度を導入している大学があり、大学ごとに条件はさまざまです。
また、採用人数は2~10人位のところが多く、学業優秀な人に限られます。
大学独自の奨学金制度も、日本学生支援機構のように、給付型と貸与型があり、貸与型の場合は無利子と有利子とがあります。
新聞社の奨学金
朝日・毎日・東京・読売・産経・日本経済新聞社の奨学金で、新聞配達所に勤務しながら奨学金を受けれる「新聞奨学生」といわれるものです。
新聞配達所での勤務が必須のため、住み込みになることが多いのですが、住むところは新聞配達所が用意してくれるので、家賃の心配はいりません。
また、奨学金とは別に給与を支給されるので、教材費や交通費などもまかなえ、無事に卒業できれば奨学金を返還する必要もありません。
病気・障害・遺児などのための奨学金
病気や災害・交通事故などで保護者を亡くしたり、保護者が重い障害をおっている家庭の子供のための奨学金で、一番有名なのが、あしなが育英会です。
他にもがん保険で有名なアフラックの小児がん経験者・がん遺児奨学金制度や漁船海難遺児育英会など、さまざまな理由で保護者を病気や事故で亡くしたり、自信が病気や障害を抱えているまたは抱えている時に利用できる奨学金制度などもあります。
奨学金には、返還義務のあるものとないものとがあり、返還義務がある奨学金の場合は、借金と同じで必ず返さなくてはいけません。
日本学生支援機構の調べによると、借りた人のうち97.4%はきちんと返還しているのですが、残念ながら未返還の人もいます。
変換された奨学金は、次に必要な学生のために利用されるものなので、きちんと返さなくてはいけません。
また、日本学生支援機構は平成20年11月に全国銀行個人信用情報センターに加盟したため、3ヶ月以上の延滞者の情報が登録されるようになりました。
そのため、将来住宅ローンを組む時や何かのローンを組む時に、奨学金を返還していないために、ローンが組めないことがあるのです。
学費や生活費の心配のいらない新聞奨学生は卒業後の返済もない
上記でも説明しましたが、新聞社の奨学金制度で、新聞配達所に勤務しながら奨学金で大学に通うというもので、唯一給与(12~15万くらい)も支給される奨学金制度です。
多くの新聞配達所では、朝・夕の配達が主な仕事です。
しかし、その他にもチラシの折込作業・集金業務があるところもあり、配達以外の仕事も多いので、学生生活や住まいにも制限がかかります。
たとえば、夕刊の配達は午後3時頃に配達所に戻って準備をしないといけません。
そのため、配達所に戻れるように授業の選択をしないといけないし、部活動やサークル活動も難しいです。
だから、理工系や医療系のように実習が多い学部や教員課程を取得したい場合は、時間的に両立できないこともあり、採用されないことが多いです。
また、朝が早いため、新聞配達所の近くに住むことが条件のところが多く、ほとんどのところでは配達所が用意した無料の寮に入ることになります。
新聞奨学生は他の奨学生と違い、学生生活のほとんどを配達所と大学の往復だけになるので、よほどの覚悟がないと卒業まで両立するのは大変です。
しかし、新聞奨学生のいいところは、奨学金とは別にお給料も支給されるので、学生の間にしっかり貯めておけば、就職活動の時や卒業後に必要な引っ越し費用などを貯めておくことができます。
また、新聞奨学生の経験は、就職活動の時にとても「プラス評価」になるので、就職活動がスムーズにいくようです。
ただし、万が一途中で辞めるような時は、奨学金の一部を返還しないといけなくなり、その場合は、一括返済になります。
授業料が払えなくて休学しても退学してもお金がかかる
大学には、「休学」という制度があり、留学のため・病気のため・ボランティア活動など、さまざまな理由で休学する人がいます。
新聞奨学生の場合は、給与をもらいながら奨学金も受け取れるので、授業料が払えなくて休学なんてことはありませんが、他の奨学生の中には、授業料が払えなくて休学する人もいます。
授業料を払えなくて休学する奨学生の多くは、授業料をバイトで稼いでから復学を考えるようです。
しかし、どこの大学でも休学はできるんですが、私立の大学の場合は、休学するにもお金がかかります。
国立や公立大学の場合は、休学届けを出せばいいだけですが、私立大学の場合は、授業料ほど高くないですが、休学には費用が必要です。
休学にかかる費用は、大学や学部によって違いますが、どこの大学・学部でも必要なのが「在籍費」で、半期3万円や5万円、高いところだと10万円必要な大学もあります。
その他にも大学によっては、半期ごとではなく年単位になるところや、施設費や同窓会費・事務手数料が必要なところもあり、施設費が必要な大学だと年間で30万円近くかかるところもあるのです。
また、申し込み期間が決まっているので、期間を過ぎてからの手続きや、学期の途中での休学は、授業料が全額もしくは一定額必要となるので注意が必要です。
さらに、休学費を払えないとなると、自主退学するしかないのですが、退学する時も学期の途中での退学の場合は、授業料全額もしくは一定額を納めないといけません。
休学するにしても退学するにしてもお金がかかります。
また、奨学金を給付されている場合は、休学中の給付はされないので、奨学金で在籍費用は払えません。
せっかく入った学校ですが、本当に続けることがいいのかをよく考えて、休学・退学を選びましょう。
授業料が払えないと除籍になる!払えば復学できる?
自分で学費を工面しないといけなくなった学生にとって、休学費を払うのも困難だと思いますが、きちんと手続きしないと「除籍」になります。
大学によって除籍の定義は違うようですが、自分の意志とは関係なく、授業料の未納や、在籍年限を超えた人・大学内で問題を起こした人などが、大学側から退学にされることをいいます。
時々、インターネット上で「除籍になると入学自体がなかったことになる」「除籍になると単位がなくなる」と記述されているところもあります。
しかし多くの大学では、除籍と退学の区別はなく、除籍証明書を発行してもらえるところが多いです。
また、授業料未納で除籍になった場合は、期限がありますが、納付すれば復籍できるようになっています。
ですが除籍は、処罰のようにとらえている人も多く、大学にいられなくなるようなことをして辞めさせられたと思う人もいるため、いざ就職活動をするといった時に不利になることもあります。
そのため、退学しても再入学ができるので、授業料が払えないからと放っておかずに、まず学生課で相談をして、休学届または退学届けをきちんと提出することをおすすめします。
授業料の納付期限に奨学金が間に合わない!学生ローンでしのぐ
新学期になって突然、親の会社が倒産・親がリストラにあうなど、急な家計の変化があった場合に、日本学生支援機構では、「緊急・応急対応の採用」をしています。
しかし、貸与開始時期は、家計急変の自由が発生した月以降の希望月からの貸与になるため、納付期限に間に合わない場合があるのです。
そんな場合の応急処置として、カードローンや学生ローン・クレジットカードのキャッシング枠を利用してしのぐ方法があります。
カードローンなどでしのぐ場合は、借りれる金額が多くはないので、まず学生課に相談して、分納にしてもらわないといけません。
そして、分割してもらった金額だけ借入をして、奨学金が貸与されるまでのつなぎとして利用します
この時に、カードローンもいいのですが、学生専用のカードローンを利用することをおすすめします。
その理由は、消費者金融のカードローンより、学生専用カードローンの方が、比較的金利が低いから。
高いところで年率17.0%。低いところで年率14.4%~16.8%と銀行カードローンくらいのところもあります。
ただし、学生ローンの場合も、安定した収入が申し込み条件のため、アルバイトで毎月安定した収入がないと、申し込めません。
また、学生ローンも借金です。奨学金が貸与されたら、すぐに返済するようにしましょう。
教育ローンが組めない学生は奨学金とカードローンを上手に活用
急に自分で学費を工面しなくてはいけなくなったら、誰でもパニックになります。
しかし、落ち着いてまず学生課で相談しましょう。入学前でも、大学に相談してからどんな方法があるかを考えてください。
入学金は、どうにかして払わないといけないと思いますが、授業料は免除や半額免除になったり、分納や延納の相談にものってもらえます。
本人が申し込める教育ローンはないけれど、自分で借りれる奨学金やカードローンはあります。
勉強との両立は大変ですが、バイトをしながら、奨学金やカードローンを上手に活用して、大学を卒業することも夢ではありません。
ただし、奨学金も借金です。卒業したら返済が始まります。
奨学金の利息は在学中には発生しないので、奨学金を受け取れる学生の間に、金利の高い学生ローンやカードローンの返済を済ませておきましょう。